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「反コンピュータ通信」への投稿  
 発行/コンピュータ合理化研究会(週間金曜日の紹介  


金沢市からの報告・・・住基ネット違憲判決が出たけれど
住基ネット・希望選択制を求める金沢市民の会
中垣 たか子


§個人情報保護条例制定率は最低だった石川県
 02年8月に住基ネットが稼動する際、75の地方議会で稼動延期を求める意見書を採択、首長が政府に稼動延期を求める要望書を提出した地方自治体も39に及んだという。しかし石川県内ではそのような動きは全くなかった。金沢市議会でも議論らしい議論はなかったし、市は住基ネットへの接続に関して個人情報保護審査会に諮問することもなかった。市民に対しての広報は無きに等しく、何だかよく分からないままに住民票コードの葉書を受け取った市民が多かったのではないかと思う。残念ながら市民レベルでの反対運動もほとんどなかった。 
因みに、02年8月当時、石川県内自治体の個人情報保護条例制定状況は全国最低で41市町村で制定済みは6市町だけ、本格稼動直前の03年7月でも13市町だけで、当時の全国都道府県平均の制定率73%と比較すると県内の制定率はその半分以下だった。

§「市民の会」スタート
 そんな中で、「このまま住基ネットを認めてしまうのはイヤ。今からでも、できることをやろう」と『住基ネット・希望選択制を求める金沢市民の会』がスタートした。といっても最初はグループの名前もないまま、数人で市の個人情報保護条例にもとづいて住民票コードの削除請求をしたのだ。
 請求は認められず03年1月に異議申立て、04年4月にやっと「市の決定<住民票コードは削除しない>は妥当」という答申が出た。答申に付いた意見は「市民の不安感を取り除くためにも、引き続ききめ細やかなPR活動を行って制度の趣旨の周知を図るとともに、…セキュリティ対策をアピールすることにより」云々と、住基ネットの本質的な問題にはまったく触れない内容で、とても残念だった。
 この間、石川でも「住基ネット差し止め訴訟を進める会」が発足し原告団へのお誘いがあったが、訴える相手は県と国だけで、住基事務を実際に担当している市は対象としないという。「それなら、私たちは市や市議会に働きかけていこう」と、「市民の会」としては訴訟には参加しなかった。

§「市民の会」で取り組んだこと
 03年4月の統一地方選では市議選立候補者へのアンケートを行った。このとき何よりも印象に残ったことは、回答を催促するための電話かけで「住基ネット」という言葉がなかなか通じなかったことだ。市議選立候補者やその事務所担当者がこれでは、自分に11桁の番号が付けられていることの自覚も、それが何を意味するかの認識もない市民が多数派ということではないだろうか。
 また、住基ネットからの情報漏洩には罰則規定があるのに同じ住民基本台帳法第11条で閲覧が認められているのは納得いかないので、03年6月、市に対して住基台帳閲覧の原則禁止を要望した。市議会にも『国に対して「11条の廃止または抜本的な見直し」を求める意見書の採択』を陳情した。これは後に請願として提出し直し、12月議会で文案はかなり簡単になったが全会一致で採択された。

§住基台帳閲覧実態調査に参加
 その後しばらく「市民の会」は休眠状態だったが、昨年秋、情報公開クリアリングハウスより住基台帳閲覧実態調査の呼びかけがあり、気になっていた問題なので、さっそく参加することにした。
 聞き取りで市民課担当者は「法律には従わざるを得ない」と繰り返し、法に従っているのだから何ら問題はないという対応だった。書き写された個人情報がどう扱われているかフォローするのは不可能だと認めつつ、でも誓約書を書いてもらっているのだから「それを信じるしかない」と言うのだ。市民の個人情報を売っているという事実を認識しようとしない人たちが、私たちの住基情報の管理をしている実態を確認して、呆れるとともに不安を感じた。

§住基台帳からの削除請求
 調査結果を踏まえて、今年の3月、市に要望書を提出した。要望項目は@閲覧用台帳から個人情報の削除を認めること、A閲覧実態を市民に説明すること、B商業目的の閲覧は原則禁止とすることである。要望書には84名分の削除請求を添えて出した。この削除請求はとりあえず身近なところで声をかけて数日間で集めたものだが、このときの感触では、閲覧実態を訴えながら街頭署名などをやれば相当な数を集められるのではないかと思った。
 市の回答は「個人情報の削除は法的根拠がない。閲覧禁止は法に違反する。閲覧請求の受付の際、今までより厳格な審査を行う。請求件数・抽出件数を1年間分まとめた統計資料の公表を検討するが、それ以上知りたければ情報公開請求をせよ」というものだった。

§何も変えない金沢市
 その後、ついに総務省も検討会を設置することになり、各地の自治体で閲覧を制限する動きが続いている。ところが金沢市は「総務省の検討作業が始まったので、いま要領を直しても、またすぐ変えることになる」と様子見を決めこみ、「閲覧請求の際の審査をより厳格にする」と繰り返すばかりだ。「金沢市は他市と比べて規制が厳しいから、見直す必要はない」とも言うのだが、厳しいはずの規制のもとで、「ラーメン店開業のためDM送付」という目的で閲覧したのは2件だけとか、あきらかに不審な閲覧が行われているのが判明しているにもかかわらず、事件が起きない限りは何もしないらしい。
 そもそも、法的に保護されるべき個人情報を公開していることが問題なので、不審な閲覧だけを規制したところで問題は解決しない。
市職員の、市民のプライバシーや人権に関する鈍感さは、市民として本当に情けない。

§地裁判決後の市議会
 6月市議会では、金沢地裁の住基ネット違憲判決を受けて「住基ネットの選択制導入を」という質問が出たが、市長答弁は「すべての住民情報が記録されていることが前提の制度である」と総務省の主張そのまま。自己情報コントロール権に関しては「法律上の権利として確立しているわけではない」との見解を示した。
 また、住基台帳の閲覧に関しては、「遠からず法改正される状況なので、今の仕組みで厳格な運用に留意していく」と答弁、閲覧用台帳からの個人情報削除についても「記載は法により義務付けられている」とのこと。「国にすみやかな法改正の要望を」という質問には、自らが会長を務める全国市長会を通して国に要望していくと答えた。つまり、金沢市としては何もしないということらしい。
 6月議会では「閲覧制度の早期見直しを求める意見書」も全会一致で採択された。

§やはり住基法11条は廃止を
 現在、商業目的の閲覧は規制される方向になっているが、公的な閲覧なら問題ないのだろうか。
 たとえば金沢市の場合、適齢者情報の収集のため、毎年、自衛隊が閲覧に来ているが、この閲覧は自衛隊法97条等に基づくという理由で、市が定めている閲覧要領の規制がないのだ。役所同士なら、市民の個人情報を本人に何の断りもなく融通しあっていいのか。
 自己情報コントロール権を踏みにじり、プライバシー侵害を引き起こしている閲覧制度はやはり廃止すべきである。

       (「市民の会」のHP( http://juki.popolo.org/ )もぜひご覧ください。)




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